インド工科大学(IIT)をはじめとするインドの優秀な学生の採用を支援するプラットフォームTechJapanHub。サービスの一環であるサマーインターンを通して選考し、採用を決めた企業様にインタビューさせていただきました。今回は、見回り業務や警備などさまざまな業務のDXを支援する、次世代アバターロボットの開発、提供を行うugo株式会社ロボット開発部でメンターを務めた横澤秀一さん、管理部で受け入れを担当した荒木祥子さんにお話を伺います。
ugo株式会社
ロボット開発部 ソフトウェアマネージャー 横澤秀一
管理部 荒木祥子
インターン受け入れ:6名
採用:3名
ーはじめに、TechJapanHubをご利用いただいた背景を教えてください。
横澤:弊社ではロボットのハードウェア及びソフトウェアの開発を全て自社で行っています。そのため、幅広い分野の知識・技術力を有するエンジニアを採用したいと考えていました。加えて、スタートアップでもあるため、主体的に行動して業務を進められる人材を求めていました。はじめは国内でエンジニアを募集していたのですが、なかなか優秀な方を見つけるのが難しく、海外からの採用に踏み切りました。
代表の松井がインドにインターンした経験があり、インドの技術力の高さに感銘を受けたことから、インド工科大学(IIT)からの採用を考えたそうです。松井が元々TechJapanさんと交流があったこともあり、サービスを利用することになりました。
ー外国人採用は初めてだと伺いました。
荒木:弊社は2018年に設立してから、ほぼ中途採用でメンバーを増やしてきました。日本の新卒の学生ですら採用したことがないのに、突然「インド人の新卒を雇います」と宣言され、かなりの衝撃を受けました。全てが未知でしたから。
ーそうですよね…。そこから、どのようにインターンを進めて行かれたのでしょうか。
荒木:開発の横澤と連携を取りながら、インターン生をサポートできるようプログラムを考えていきました。それまで社内ではあまり部署間の連携がなかったのですが、部署を越えて進めることができました。
具体的には、まず応募者の中から6名を選び、1ヶ月間オンラインでインターンを行いました。その中でより優秀だった方3名に実際に来日していただき、3週間、オフラインで一緒に仕事をしました。日本に来て就職することを前提にすると、オンラインだけでは距離感や空気感がわからないと思ったのです。日本に来て3週間住んでもらうことで、本人たちも本当にここで働きたいのか見てもらいたいと考えました。
横澤:技術面でも、実際にロボットを動かしてみないと、良いか悪いか判断できないところがあるんです。加えて、弊社ではメカ、電気、ソフトウェアとさまざまな分野のエンジニアが同じ空間に集まってロボットを作っています。ロボットを触りながらコミュニケーションを取る事を大切にしているので、彼らがその価値観にマッチするか確かめるために、オフラインインターンシップを導入しました。
ー組織面でも技術面でも、より具体的にお互いを知るために、オフラインでもインターンを行われたのですね。具体的な内容と、どのような成果が出たのか教えてください。
横澤:まずオンラインのインターンでは、弊社のロボットが抱えている課題をいくつかピックアップして、それをインターンで取り組むテーマにしました。6名の学生さんたちにはチームを組んでもらい、チームとして取り組みたいテーマを選んで解決方法を考えてもらいました。進捗の共有やフィードバックなどのコミュニケーションは週一回のオンラインミーティングを開催して、その場で実施しました。
実際に取り組んでいただいて、個人差はあったものの、学生のスキルの高さに驚きました。中には最新のテクノロジーのベンチマークを行って、どれが課題に対して一番適しているか提案してくれた方もいて本当に学生さんなの?とびっくりしました。
オンラインのインターンで、特にスキルが飛び抜けていた3名に、オフラインのインターンのオファーを出しました。履歴書だけだと、例えばどのプログラミング言語が扱えるかはわかりますが、それがどのレベルなのかはわかりません。インターンを通して実際に彼らの課題に対するアプローチを見て、こんなに明確に違いが出るのかとハッとしました。
オフラインでは、ロボットを触りながら2つの課題に取り組んでもらいました。一つは、ロボットが自身に搭載されたカメラを用いて行う画像認識の精度向上です。弊社のロボットは点検・警備で施設を巡回する時に、エレベータに乗ってフロアを移動します。その時にエレベータのボタンを押下するので、ボタンの位置を把握するためにこの技術が応用されます。こちらは、世の中にあるAI技術を数種類調べて、速度と正確性を比較してもらい、どれを使うのが良いか技術的な見通しが立つところまで仕上げてくれました。
もう一つは、社内の新しいプロジェクトで使う、AMR(自律走行搬送ロボット)の自律走行アルゴリズム開発です。このテーマに取り組んだ学生たちは皆実際にロボットを動かしながら開発したことがなかったようですが、ゴールを設定するとロボットが動き出すところまで実装してもらうことができました。流石に短期間だったので、移動中に障害物を避けるなどの細かいところまではいきませんでしたが、まず動かすところまで開発を進めてくれたので、今後のプロジェクトを進める上でも非常に役立つものになったと感じています。
全体として、「ここまでは難しいよね」と考えて課題を用意していたのですが、それを上回って成果を出してくれたと感じています。
ーありがとうございます。オフラインでインターンに参加した3名の採用の決め手はなんでしたか。
横澤:技術面がすごく優秀であることと、仕事へのアプローチの仕方が素晴らしかったことです。我々の考えた課題に対して、主体的に仮説を立て、必要なものを調べて組み合わせて解決策を見つけていく力があると感じました。
加えて人間性ですね。実際に一緒に仕事をしてみると、3人ともフレンドリーで優しくて、日本語もすごいスピードで覚えてくれました。来日する前は正直、どうなるんだろうと感じていましたが、コミュニケーションの観点で「これなら一緒に仕事ができる」と十分感じられたことも大きかったです。
ー受け入れの中で、大変だった部分はありましたか。
荒木:インドの方は、日本とは全く違う宗教や文化をお持ちなので、どこまで配慮が必要なのか見極めるのが難しく、準備期間が大変でしたね。例えば、宗教的にベジタリアンの方が多いというので、会社の近くでそういった料理が食べられるお店を探したり。3週間日本で暮らすとなると、学生さんなので金銭的に毎日外食も厳しいかもしれないと考え、キッチン用品を用意したり、インドの食材が手に入るスーパーをピックアップしてみたりしました。彼らが本来持っている技術力や、ロボットが好きという気持ちを最大限発揮できる環境作りをすることを重要視して準備しました。
ーそこまで準備されていたのですね。実際に来日されてからは、何か気をつけたことはありますか。
荒木:頻繁に食事に誘ったり、お休みの日には私がディズニーシーに、横澤は浅草や渋谷に連れていったりしました。インドにはディズニーシーのようなテーマパークはないそうで、みんな終始楽しそうにはしゃいでいました。国は違えど、やっぱり20歳くらいの子なんだなと感じられて、親近感が湧きました。心の距離が近づいたと思います。
横澤:私も渋谷に連れていったとき、ポケモンセンターやNintendo TOKYOに盛り上がっている姿を見て親近感が湧きました(笑)。やっぱり好きなんだなと。
ー可愛らしいですね(笑)。仕事以外の場所でもコミュニケーションの機会を設けられていたんですね。一緒に仕事をする中ではいかがでしたか。
横澤:技術的なコミュニケーションが難しいと感じる場面もありました。日本の学生さんだと、自分も学生だったのでどのくらいのスキルセットを持っているのか大体わかります。しかしその情報が全くないので、どこまで踏み込んで説明するべきなのか最初のうちは悩みました。実際やってみると、日本の学生さんよりいろいろなことを知っているなという印象を受けましたね。
それから、技術的な細かいニュアンスを口頭で伝えるのは難しかったです。我々の言語スキルの問題ではあるのですが、積極的に質問してくれているのにその場でレスポンスを返してあげられないのは、自分としては残念でした。
彼らの方が、言語が違う中でのコミュニケーションに慣れていました。図にまとめて説明したり、プロジェクトの方針と彼らのやっている事がずれないようにマメに情報共有してくれたりしてくれて、我々の方が感心しました。日本人同士だと「わかっているだろう」と確認しないことも、コミュニケーションミスを極力回避するために言語化して細かくコミュニケーションをとってくれたので、私たちの学びにもなりました。
ーインド高度人材を採用することで、会社にはどのような変化があるでしょうか。今後の展望を教えてください。
荒木:初めて海外の方を採用するということで、彼らを受け入れて組織を強くしたいと考えています。会社としても海外進出を考えているので、社全体としてグローバルな考え方をしていけるように研修なども取り入れていきたいですね。
彼らが2024年10月に来日して社員として働くようになると、インターンの際とはまた違ったサポートが必要になると思います。実際に働かないとわからないこともあるので、適宜フォローしていければと思っています。
海外人材の採用はこれで最後ではなく、これからもインドをはじめ、他の国の方々にもどんどん入ってきていただける組織にしたいと考えています。これを第一歩として、採用を進めていきたいです。
横澤:短期的な視点では、まず技術力の底上げができると思います。例えば何か調べる時にも、日本語と英語とでは情報量が全く違います。新しい技術を積極的にキャッチアップしている彼らが入ってくれることで、社内全体の底上げができればと考えています。
長期的には、グローバル化を進めていきたいですね。彼らは英語でのコミュニケーションに長けていますし、異なる文化圏の人と接することにも慣れています。彼らにリーダーシップを発揮してもらい、海外での製造や販売も視野に成長していければと考えています。