2023-10-23

Journal

【​TechJapanHub事例インタビュー/株式会社batton様】​足りないスキルも学習し、実践レベルに。世界で大きな仕事をする仲間が見つかった

​​インド工科大学(IIT)をはじめとするインドの優秀な学生の採用を支援するプラットフォームTechJapanHub。サービスの一環であるサマーインターンを通して選考し、採用を決めた企業様にインタビューさせていただきました。​ 今回は、AI搭載の業務効率化システムを開発・販売する株式会社batton取締役CTO、秋山真咲さんにお話を伺います。


​​株式会社batton​ 取締役CTO 秋山真咲​ 

​​インターン受け入れ:3名​  採用:2名​ 



​​<即戦力のスキルと思考力を持つ人材を求めていた​ >


​​ーはじめに、TechJapanHubをご利用いただいた背景を教えてください。​ 


​​これまで弊社のエンジニアは、中途採用しか行っておらず、wantedly経由やリファラル採用がほとんどでした。契約形態も業務委託だったので、新卒、中途にかかわらず正規雇用できるエンジニアを求めていました。​ 


​​しかし、日本は生産労働人口が減少し、エンジニア不足が深刻です。弊社は創業5年目で、まだまだ認知度の低い会社。優秀な若手エンジニアを正規雇用するには、国内だけでは無理があると考えていました。​ 


​​TechJapanさんは、代表の川人から紹介を受けて知りました。インドは総人口が多くポテンシャルのある国で、大学の卒業生は優秀なイメージ。興味を持ちましたし、良い人財と出会えるのではないかという期待感がありましたね。​ 


​​ー応募者には何を求めていましたか。​ 


​​学生なので実務経験はありませんから、そこを求めるのは酷だなと思っていました。でも、プログラミングのスキルは求めました。弊社は創業間も無く、エンジニアは日々のチケットを消化していくことで忙しい状態。スキルセットがない人が入ってきても教えていく余力がないのがわかっていたからです。まず手を動かせること。実装スピードが速いこと、新たな技術習得に貪欲な姿勢を求めました。​ 


​​加えて、プロセスを組み立てられる人が欲しいと思っていました。なので、サマーインターンの中ではどういう技術スタックがいいのかの選別をしてもらっています。要望に対してどの技術を使えばいいのか考えることは、限られた時間での取捨選択や思想が必要になるからです。今思うと、要望は高かったですね(笑)。​ 




​​<足りないスキルセットも、短期間で実践レベルに​ >


​​ー観点を明確に決められていたのですね。どんなサマーインターンを行い、どんな成果がありましたか。


​​弊社のサービスである「FAXバスターズ」のプロダクトサービスを補完するものを作ってもらいました。​ 


​​日本では受発注の際、デジタルでやりとりしている事業者は全体の14.2%で、それ以外はアナログ。そのうち4割はファックスでやりとりしているという現状があります。スキャンして読み取ろうにも、発注書の様式が各社でバラバラ。人手を介してバラバラなフォーマットに記載しているデータをバックエンドシステムに手入力しなければならない状況でした。そこで、AIを使ってバラバラな書面のフォーマットを自動統一し、データ化できるようにしたのがFAXバスターズです。​ 


​​データ化できるようになったものの、後から注文データが間違っていたことがわかり発注主より変更要望があった場合など、一度入力したものを人の記憶をもとに自然言語で簡単に検索したいというニーズがありました。そこで、インターンのみなさんには必要なデータを自然言語で検索し、追記できるシステムを作ってもらうことにしたのです。​ 


​​はじめに作って欲しいものをリクエストして、質疑応答の時間を設け、3名のインターン生にプレゼンテーションしてもらいました。どんなものを作ろうとしているのか、どんな理由でどの技術スタックを採用しようとしているのか。実装する前に考え、役割を決めて発表してもらいました。その内容をブラッシュアップしてこれで行こうと決め、そこからはデイリースクラムを組んで日々の業務を進めていきましたね。​ 


​​最終的に、FAXバスターズで取り込んだPDFをCSV ファイルにし、そのテキストデータを自然言語で検索できるシステムができました。検索したものをフォルダ化するところまで2ヶ月で作ってくれましたね。​ 


​​最後は、全社員の前で成果を発表してもらいました。市販化には至っていませんが、インターンシップのチャレンジ課題としては十分に合格を出せる成果だと考えています。​ 


​​ーインドの学生たちと接して、どう感じましたか。​ 


​​真面目な日本人と比べてどんな仕事をするか、はじめは半信半疑でした。でも働いてみると彼らも真面目で、手を抜いたりすることなく真剣に取り組んでくれましたね。​ 


​​そして、今自分が持ち合わせていないスキルセットに対して、実践で使えるよう学習していく能力には目を見張るものがありました。フロントエンドを中心にやってくれていた学生は、実はバックエンドが得意だったそうなんです。しかも、コロナが流行って家にいなければならない時間が増えたから、趣味でプログラミングを始めたと聞いて。それでこのレベルになるのかとびっくりしました。​ 


​​また、彼らは自然言語を解釈するプログラムなんて書いたことがなかったんですよ。技術に対する理解力がすごいですし、実装スピードが速いですね。リクエストしたら、翌日「作ってみました」とレビューが入っているような状態でした。エンジニアとして成功したいという思いが強く、そのために努力を惜しまない姿勢が見えました。​ 


​​自分の市場価値が上がることに関心があるので、それを満たすような仕事の渡し方、取り組みをしていかなければならないとも感じましたね。お互いなあなあの意識にならないので、双方にとって刺激的な関係性を持ち続けられるのではないかと思っています。​ 




​​<言語よりも、萎縮しないコミュニケーションが肝​ >


ー採用の決め手を教えてください。​ 


​​3名中3名採用できなかったのは予算の関係もありますが、プロジェクトに対する貢献度合いや実装スキルで2名を選ばせていただきました。2名とも、日本の学生だったら採用できないレベルの人材だと感じています。​ 


​​インターンをすることで、その人が持ち合わせているスキルセットを、スナップショットではなくある期間の中で見続けることができました。ミスマッチを防ぐためにも、お互いのために良かったと思います。​ 


​​ー受け入れの中では、どのようにコミュニケーションを取りましたか。苦労したことや気をつけていたことを教えてください。​ 


​​フルリモートで、ほとんどスラックでやりとりしていました。テキストコミュニケーションなので、質問に対してなるべく速やかに答えること、誰に聞けば良いのか明確にすることを心がけていました。​ 


​​また、萎縮させないようコミュニケーションには気を配りましたね。私たちは彼らを「さん」付けで呼びますが、彼らは「さま」付けで呼んでいました。何か見落としがあると、「大変申し訳ありません、このようなことが二度とないようにします」とメッセージが来ることも。そこまで思っていないんですけどね。上下関係を大事にするんだろうなと感じました。だからこそ、彼らが「怒られている」と感じることなく、自分が思う方向に進めていけるよう気をつけました。必ず「いいね」から話をはじめ、「ダメ」とは言わなかったですね。​ 


​​始まる前は、言語面を一番気にしていました。実際、インドの方特有のイントネーションで、英語が堪能な者でも聞き取るのに苦労する部分はありました。しかし幸いなことに外国籍の社員がいたので、部署の垣根を越えて参加してもらい、意思疎通できる環境を作ることができました。チャットは、翻訳ツールを使えば問題ありませんでしたね。正直、もっともっと苦労するかなと思っていましたが、やってみるとなんとかなりました。​ 


​​ー全体を通して、TechJapanのサポートはいかがでしたか。​ 


​​結果や成果において、期待を上回りました。応募には5000以上の閲覧があり母集団の形成ができ、173名に応募いただきました。候補者を絞る上でも情報をいただきましたし、環境を用意して終わりではなく、本当に伴走いただいたのが良かったですね。​ 




​​<世界中の仲間と大きな仕事をする第一歩​ 


​​ーインド高度人材を採用することで、会社にはどのような変化があるでしょうか。今後の展望を教えてください。​ 


​​『小さな組織、大きな仕事』という本があります。社員が2つの大陸と8つの都市に散らばって、ほとんど会わなくてもうまくやっている、ある企業を描いたノンフィクションです。エンジニアには愛読者が多いと思いますが、私もこの本に感銘を受けた一人。世界のエンジニアの仲間を集めて、大きな仕事を成し遂げたいと考えています。今回は、その第一歩です。インドの若く優秀なエンジニアと、大きな仕事をしていきたいと考えています。​ 


​​これをきっかけに、彼らの後輩にも日本にはこんなベンチャーがあるよと伝わり、興味を持ってもらうきっかけになると良いですね。毎年今回のような取り組みを進めていければ、今回オファーを受託してくれた二人がメンターや指導者になるなど、良いサイクルが回ると思います。​ 


​​また、彼らの採用が弊社の新卒生にとっても良い刺激になったと思います。最後は全社員の前で発表したので、こんな短期間でこんな成果物を出せるというのは、エンジニアでなくても衝撃を受けたはずです。同世代、下の世代でこんなにすごい人がいるんだと。私自身も、良い意味で危機感を覚えました。それを含め、良い取り組みだったと感じています。​